大胆な対談・第二部「青春のつれづれ草」

(辰)あ〜ココア美味しかった。
(ま)それはよかったですね。
(辰)それでつれづれ草だよ。
(ま)えっ?唐突になんですか。
(辰)だから漫画仲間と作ってた同人誌だよ。
(ま)どんなメンバーだったんですか?
(辰)おだ辰夫の他には、新宅よしみつ、高岡凡太郎、篠原幸雄、大和田夏希、かたおか徹治なんかだよ。その頃墨汁ニ滴とかいう同人誌をすがやみつるさんや、小山田つとむさんがやってらして、まぁ墨汁ニ滴とつれづれ草は当時の二大同人誌だな(たぶん)。米政界の共和党と民主党みたいもんだな。どっちがどっちかはわからないけど。
(ま)へ〜、そうなんですかぁ。で、どういう活動してたんですか?コミケとか?
(辰)そんなものは、まだなかったよ。新宿の漫画喫茶コボタンに集まって漫画論を戦わせたり肉筆同人誌つれづれ草を発行していたんだ。
(ま)どんな内容だったんですか?
(辰)漫画だよ。
(ま)それはわかってますよ。一番想い出に残ってるのは?
(辰)高岡凡太郎の前号の批評だな。肉筆誌だから原稿をそのまま回覧するわけだよ。でもって次の号では前号の感想を書いたりもするわけだ。高岡凡太郎はあんまり漫画の原稿は提出しないのに他のメンバーが描いた原稿について細かく感想を書いてくるんだよ。これが妙に面白くてねぇ。これがいちばん印象に残ってるなぁ。
(ま)なんか、実体が掴みにくい話ですね。
(辰)編集は篠原幸雄が中心になってやっていてな彼は今では(株)ワークハウスの社長だよ。仲間うちで一番の出世だな。ワークハウスのホームページも自ら運営しているMacの達人だ。
(ま)そうなんですか。フリーソフト作者まるたつをよろしく!と言っておいてもらえませんか?作品集CD-ROMとかの企画があったら是非声をかけてくださるように...
(辰)おいおい、この対談で売り込みなんかするなよ。
(ま)すみません。ところで、デビュー前後の頃で何か秘話は?
(辰)少年ジャンプ編集部パジャマ乱入事件かな。
(ま)なんですか、それ?
(辰)たしか高岡凡太郎だったと思うんだが、ある時パジャマ姿のワタシを見て
「良いパジャマだねぇ。とてもパジャマに見えないよ。これなら普段に着てもおかしくないよ。」
なんて言うものだからそれをまに受けて、ある日少年ジャンプ編集部にそのパジャマを来て行ったんだよ。そしたら担当編集者が
「それ、もしかしてパジャマ?」
と言って怪訝な表情をしていたんだよ。その顔を見たら急に恥ずかしくなって帰路はうつむいていたよ。人間の心理って面白いね。
(ま)貴方がにぶいだけですよ。
(辰)あと、裸足で電車事件だな。
(ま)えっ?
(辰)たしか少年サンデー編集部からの帰路のことだ。その日、素足にサンダルばきだったのだが池袋駅で乗車する時人に押されて、片方のサンダルが電車とホームの隙間に落ちたんだよ。運の悪いことにその日は雨で車内は水浸し。そんな中、片足だけサンダルってのも異様だからバランスをとるためもう片足も脱いで裸足になったんだよ。水浸しの車内で裸足ってのも今思うと異様だよな。
(ま)いつでも異様ですよ。
(辰)気がつくと混んだ車内なのに俺のまわりだけ人がいないんだよ。
(ま)そりゃそうでしょ。
(辰)で、なんとか富士見台の駅で降りたんだけど、裸足で雨の道を歩くのは歩きづらいぞ。おまけに傘も持ってなかったからな。ずぶぬれで裸足の長髪の若い男がトボトボ雨中を歩くのはちょっと怖いぞ。
(ま)はい、怖いです。
(辰)あまりになさけないので高岡凡太郎のアパートに転がり込んで足をふいてサンダルを借りて帰ったんだよ。ああ、青春だなぁ。
(ま)どこが青春なんですか。疲れたから、ちょっと休憩しましょう。


前の項目 目次に戻る次の項目